沖縄で暮らしていると、台風の前後にエアコンをどう扱うかは毎年の悩みになります。雨戸を閉め、植木鉢を家に入れるところまでは習慣になっていても、室外機は「そのままでいいのか」がはっきりしないまま風が強くなっていく、という方が多いのではないでしょうか。
この記事では、メーカー各社の公式な案内と気象庁の統計をもとに、台風の前、最中、通過後にやることを順に整理しました。全国向けの記事にはあまり書かれない、沖縄特有の塩害にも触れます。
沖縄では「年に7.7個」が前提になる
気象庁の台風の平年値(1991年から2020年までの30年平均)によると、沖縄地方への台風の接近数は年間7.7個です。接近とは、台風の中心が沖縄県内の気象官署などから300km以内に入った状態を指します。
| 月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 接近数(平年値) | 0.6 | 1.5 | 2.2 | 1.9 | 1.1 | 0.3 |
ピークは8月、次いで9月です。お盆を過ぎたから安心という季節ではなく、10月に入っても1.1個の平年値があります。対策を解くのは早すぎない方がよい、ということです。
風の強さについても、沖縄には記録が残っています。1966年9月に宮古島で観測された最大瞬間風速85.3m/sは、富士山山頂を除く国内観測史上1位です。2015年9月には与那国島で81.1m/sが観測されています。本土向けの一般的な台風対策の記事が想定している風速とは、前提が違うということです。
台風が来る前にやること
室外機が固定されているかを見る
三菱電機の霧ヶ峰公式サイトでは、転倒防止策として、室外機を置台に固定する方法、家の壁面と室外機を固定する方法、コンクリートの基礎にアンカーで固定する方法が挙げられています。
まず見てほしいのは、室外機がただ置いてあるだけになっていないかどうかです。プラスチックの置台やブロックに乗せてあるだけという設置は珍しくありません。年数が経っていると、固定用のボルトが錆びて効いていないこともあります。手で押してみて動くかどうかで判断がつきます。
カバーをかけるなら、運転は止める
ここは各社の案内が一致しています。室外機カバーは風雨や飛来物から守る効果がある一方で、つけたまま運転してはいけません。
- 三菱電機(霧ヶ峰): カバーをつけたまま運転を再開すると室外機から排出される風が遮られ、冷房や暖房を使用できなくなる。故障の原因になる可能性がある
- ダイキン: 排熱が妨げられ、電気代の増加や故障の原因になるため、運転中は使用しない
- パナソニック: カバーをかけた状態では空気の流れが妨げられるため、エアコンの運転は控える
もうひとつ、霧ヶ峰のページには「しっかりと固定しカバー自体が飛ばされないよう十分注意しましょう」という注記があります。沖縄の風速を考えると、これは軽い注意ではありません。中途半端にかけたカバーは、それ自体が飛来物になります。固定しきれないのであれば、かけない方が安全です。
ドレンホースの逆流に備える
横殴りの雨と風が続くと、室内機から出た水を流すドレンホースを通って、風や水が逆に室内側へ入ってくることがあります。パナソニックは、対策として逆止弁を取り付けることで改善できる場合があると案内しています。ホースの先端が地面や水たまりに浸かった状態も詰まりの元になるので、位置だけは見ておいてください。
避難するとき、落雷のおそれがあるときはブレーカー
霧ヶ峰のページでは、自然災害によって自宅から避難する場合は電気火災を避けるためブレーカーを落とすよう案内しています。一方で、停電したときは特に何もせずそのまま復旧を待つ、とされています。ダイキンは、落雷のおそれがあるときは電源プラグを抜くかブレーカーを切ることを案内しています。
台風の最中、エアコンは使っていいのか
結論から言うと、室外機が正常な状態であれば基本的に使えます。三菱電機は、室外機は過酷な環境でも安定した能力を発揮できるかを確かめる試験をクリアしているため基本的にはいつも通り使用して問題ないとしています。ダイキンも、室外機は雨、風、暑さ、寒さ、揺れに関する300以上のテストをクリアして設計されていると説明しています。
ただし、ダイキンへの取材記事では、次の場合は使用しないよう案内されています。
- 室外機が転倒、落下、破損、移動した場合
- 室外機が浸水した場合
- 落雷のおそれがある場合
暴風のさなかに外へ様子を見に行くのは危険です。風が収まってから確認し、それまでは運転を止めておく、という判断で構いません。
台風が過ぎたあとにやること
浸水したら、乾いて見えても通電しない
ここが最も事故につながる部分です。メーカー各社の案内は共通しています。
ダイキンは、電気回路の部品に水がついてしまった場合、乾いたとしても漏電や発火などが起きる危険性があるとし、泥などの不純物が小さな隙間に入り込んだ場合はモーターなどに不具合が生じる可能性があると説明しています。日立も、浸水や冠水をした場合は絶対にそのまま通電せず、必ず点検や修理を受けるよう案内しています。三菱電機は、室外機が浸水した場合は漏電や火災につながる可能性があるとして、使用をやめて室内機のコンセントを抜くかブレーカーを落として業者に相談するよう案内しています。
手順としては、感電を防ぐためにまずブレーカーを切り、そのうえで電源プラグを抜きます。日立はこのときゴム手袋の着用を案内しています。動くかどうかを試すために電源を入れてみる、という確認だけはしないでください。浸水が浅い場合も点検は必要です。
倒れた室外機を自分で起こさない
日立は、室外機が転倒した場合は自分で起こさず、施工会社や修理窓口に連絡するよう案内しています。配管が損傷して冷媒ガスが漏れるおそれがあるためです。写真を撮っておいて、そのままの状態で連絡するのが確実です。
吹き出し口と吸い込み口の飛来物を取る
台風のあとは、室外機のまわりに葉やビニール、砂が吹き寄せられています。吹き出し口と背面の吸い込み口がふさがれると排熱が滞り、効きが落ちます。ブレーカーを切ってから、手の届く範囲の異物を取り除いてください。日立は、カバーをかけていた場合は取り外したうえで運転させ、不具合がないかを確認することを案内しています。
沖縄で欠かせないのが、真水で塩を流すこと
台風は海水を巻き上げて内陸まで運びます。沖縄県も、台風の際には強い潮風によって塩分が付着する潮風害を、風害や冠水と並ぶ被害として説明しています。海が見えない場所でも、台風のあとに車のガラスが白くなることがあります。室外機にも同じことが起きています。
塩分は金属を腐食させます。海岸地域に据え付けた室外機について、パナソニックは付着した塩分を除去するために定期的に水洗いをするよう案内しており、ただしエアコンの電気部品に水がかからないように注意して行うという条件を付けています。三菱重工サーマルシステムズも、海岸地帯への据付品は付着した塩分などを除去するため定期的に水洗いを行うよう案内し、外装パネルは雨水によって十分洗浄されるようにするため日除けなどを取り付けないよう配慮を求めています。
実際にやるときは、ホースで勢いよく当てるのではなく、上から真水を流して塩分を落とすイメージで行ってください。電装部品が収まっているのは正面から見て右側の側面が多いので、そこには水をかけないようにします。ブレーカーは切ってから行います。判断がつかない場合は、無理に自分でやらず、点検のときにあわせて頼むのが安全です。
効きが悪い、異音がするときに疑うところ
台風のあとで冷えが悪くなった、聞いたことのない音がする、という相談は毎年あります。よく挙げられる原因は、吹き出し口や吸い込み口のごみ詰まり、ファンの変形や破損、室外機の位置ずれ、基板の水濡れ、電装部品の故障、ドレンホースの逆流です。このうち、ごみの除去と設置位置の確認までは自分でできます。それ以外は内部の話になるため、点検を依頼した方がよい範囲です。とくに異音は、ファンが何かに当たったまま運転を続けると被害が広がります。音がしたら運転を止めて確認してください。
この記事で断定していないこと
配管やドレンホースの具体的な養生方法については、パナソニックの逆止弁の記述以外にメーカー公式の明確な案内を確認できませんでした。また、通常仕様(耐塩害仕様ではない)の室外機を水洗いしてよいかどうかも、メーカーの一次情報は確認できていません。上に書いた水洗いの案内は、いずれも海岸地域向けの耐塩害仕様室外機についてのものです。分かっていないことは、分かっていないものとして書いています。最終的な判断は、お手元の機種の取扱説明書とメーカーの案内が優先されます。
ご相談ください
ウチナーハウスは、浦添市西原を拠点に、沖縄県内のハウスクリーニングのご依頼をお受けし、内容に応じた有資格の施工者へおつなぎしています。台風のあとで室外機のまわりを片付けたい、内部の汚れも含めて一度見てほしい、といったご相談にも対応しています。浸水や転倒があった場合は、まずメーカーや販売店へ点検をご依頼ください。
ウチナーハウス
沖縄県浦添市西原1-11-15 広栄荘
080-7841-8367
参考にした情報
- 気象庁「台風の平年値」「沖縄地方への台風接近数」
- 宮古島地方気象台「台風による災害」、気象庁「2015年の台風について」
- 三菱電機 霧ヶ峰「教えて!霧ヶ峰」台風・地震などの防災対策
- ダイキン工業「空気の学校」、公式FAQ「水害などで室外機が水に浸かった場合」
- 日立の家電品 サポートページ(室外機の浸水・冠水について)
- パナソニック「台風シーズンのエアコントラブル対策法」および公式FAQ
- 三菱重工サーマルシステムズ「塩害について」
- 沖縄県「沖縄県における台風とその対策」
